メロンとバナナ

盤紹介とか書評とか。

Robert Görl / The Paris Tapes

Artist Robert Görl
Title The Paris Tapes
Label Grönland Records 184
Date 2018


Robert GörlがDAF解散後の80年代後半に、兵役を逃れるため滞在していたパリで制作したデモテープが突如リリース。

1986年の『1st Step To Heaven』でDAFが解散してから、1996年にDisko Bで復帰するまでの空白の10年間を埋める貴重な内容。

本作は、ENSONIQのESQ-1というシンセのみで作成されたデモテープらしく、未完成感は否めないが、DAF時代のリズム志向から、メロディを前面に押し出そうという意図が感じられるデモとなっている。

個人的には1stソロアルバムの『Night Full Of Tension』が大好きであり、その続編として本作が当時正式に製作されなかったことが悔やまれる。

実際には途中まで製作されていたらしいが、Görl の交通事故で頓挫してしまったそう。

こうなったら当時のセッション音源もぜひ発掘してリリースしてほしい。

Paris Tapes

Paris Tapes

GAS / Rausch

Artist GAS
Title Rausch
Label Kompakt 386
Date 2018


Wolfgang Voigtが作り出した数ある名義のうち、現在もアクティブにリリースを続けているのがGAS。

GASのサウンドは、Voigtが子供の頃にケルンの森を彷徨った記憶と、大人になってLSDをキメながら森を彷徨った記憶をモチーフとしているらしく、ワグナーやシェーンベルクのシンフォニックなサンプルをループさせたアトモスフェリックな空気感が特徴的で、唯一無二のサウンドを構築してきた。

2000年の『Pop』を最後にリリースが途絶え、2006年には総括的なコンピレーション『Nah Und Fern』がリリースされるなど、GASとしてのプロジェクトは終了したのかと思っていたが、2017年に再び活動を再開、17年ぶりに新作『Narkopop』がリリースされる。

そして、『Narkopop』から1年後に本作がリリースされ、今回のGASの再開が、ワンショットではなく継続性のあるものであり、今後さらなるリリースが期待される。

本作は、レーベルのウェブサイトに記載されているとおり、最初から最後まで通して聞かれることを意図しており、便宜上7つのトラックに切り分けられているが、実質的には60分13秒のワントラック。

サウンド的には前作の『Narkopop』の延長線上にあるが、60分通して聴くと確かに曲としての展開が感じられ、これまでのループベースのトラックとは違う印象。Voigt本人は本作を「オペラ」的としている。

個人的には、GASといえばミル・プラトーからリリースされた黄色いジャケットの1stに思い入れがあるのだが、Apple Musicでは聞くことができない。2016年のボックスセットからも除外されている。何故だろうか・・・

Rausch

Rausch

Spacemen 3 / Dreamweapon

Artist Spacemen 3
Title Dreamweapon
Label Space Age Recordings 058
Date 2018 (Original released 1990)


1988年8月19日、ロンドンのウォーターマンズアートセンターで演奏された「An Evening Of Contemporary Sitar Music」を収録。ヴィム・ベンダース監督の『ベルリン天使の詩』がウォーターマンズアートセンターで上映された際に、センターのロビーでファン15人くらいを前に演奏されたものらしい。

44分20秒に及ぶ「An Evening Of Contemporary Sitar Music」は、タイトルとは異なり、シタールの演奏は一切収録されていない。Peter Kember(Sonic Boom)がギターのコードを鳴らし、Jason Pierceがアルペジオ風のギターをかぶせ、その上をアナログシンセぽいベースの音がビヨンビヨン鳴っている、それが44分20秒間永遠続く。確かに「Contemporary Music」と言えなくもない。が、たしかにこの捉えどころのない音楽は魅力的である。

なお、1990年のオリジナルリリースは「An Evening Of〜」のみ収録。1995年のリイシュー時に2~4曲目が追加収録され、本版はそのリマスター版となる。

当時CDを買って聞いた時は、永遠と続く演奏の単調さに驚いたが、約30年後にこうしてきちんとリマスター版がリリースされ、しかもApple Musicで容易に聞けるということに改めて驚かされる・・・

DREAMWEAPON

DREAMWEAPON

µ-Ziq / Challenge Me Foolish

Artist µ-Ziq
Title Challenge Me Foolish
Label Planet Mu 400
Date 2018


『RY30 Trax』『Aberystwyth Marine』に続く未発表曲集第3弾。1998-1999に作成されたトラックを集めた編集盤で、時期的には1999年にリリースされた『Royal Astronomy』の頃のもの。

『Royal Astronomy』というアルバムは、IDM系のアーティストの作品がマニアックに複雑化する中で、やたらシンプルでポップな方向性のアルバムであり、本作もその傾向を受け継いだ作品となっている。

『Royal Astronomy』以降、Mike Paradinasは自身のレーベルであるPlanet MuのA&Rとしての活動が中心となり、アーティストとしての表舞台からは退いた印象があり、そういう意味ではキャリアのピーク時期の作品集として、アウトテイクながら良いトラックが揃っているように感じる。

個人的には、『Royal Astronomy』から約20年経過しているということを思いを越させるアルバムでした・・・

CHALLENGE ME FOOLISH

CHALLENGE ME FOOLISH

Vainqueur / Reductions 1995-1997

Artist Vainqueur
Title Reductions 1995-1997
Label Scion Version 09
Date 2018


Vainqueurは、René Löweのユニットで、Maurizioのレーベルからデビューした、いわゆるBasic Channel一派。

本作は、1997年にChain Reactionからリリースされたアルバム『Elevations』のリイシュー的な位置づけであるが、以下の特徴がある。

  • 収録曲が変更(『Elevations』から4曲落ちて、新たに2曲追加)
  • 新たに追加となった曲のうち1曲が未発表曲(Antistatic II (Full Length Mix))
  • 全体的にエディットが施されている

20年ぶりのリイシューであり、久しぶりに聞き返してみたが、そもそもがミニマル・テクノの極限のようなスタイルであり、古さは感じさせない。

しかし、当時Vainqueur含むChain Reaction周辺を聞いていた人たち、あの缶に入ったCDにスペシャルを感じていた人たちで、今もこれを聞いている人はどのくらいいるのだろうか・・・