メロンとバナナ

盤紹介とか書評とか。

Herbert / Part One, Part Two, Part Three

Artist Herbert
Title Part One, Part Two, Part Three
Label Accidental Jnr 109-111
Date 2018 (Original Released 1995-1996)


HerbertがPhonoからリリースした初期12”がリイシュー。

音源としては2012年のコンピレーション『Herbert Complete』ですでにリイシュー済みであるが、今回は単体でのVinylリリースを含む。

Herbert名義は基本的にTechno/Houseのスタイルを踏襲しているが、キックとハイハットとベースラインの音質がとにかく特徴的で、それだけでオリジナリティを獲得しているところが、20年以上前のトラックであるにもかかわらず未だに聞き返したくなる所以か。

Part One (1995)

House路線としては3曲目「See You On Monday」が最もわかりやすいが、個人的には「イパネマの娘」をサンプリングした2曲目「Oo Licky」が好み。

3曲すべて1st『100Lbs』に収録。

Part Two (1996)

1曲目「Deeper」が素晴らしい。どこにでもありそうで、誰にも似てないというのが、シリーズ全編に通じている。

「Deeper」のみ1stに収録。

Part Three (1996)

1曲目「Butt-Head」はPartsシリーズを代表する完成度の高いトラック。

個人的には、2曲目「People That Make The Music」のほうが好みだが、全体的にみるとやや浮いているか。

バランスのとれた3曲目「Thinking Of You」のみ1st収録。

以降、1996年中にPart Fiveまでリリースされ、Partsシリーズは一旦終了するが、2014年に突如Part Sixがリリースされ、同年にPart Eightまでリリースされている。

100 Lbs (Bonus CD) (Reis)

100 Lbs (Bonus CD) (Reis)

Steve Hauschildt / Dissolvi

Artist Steve Hauschildt
Title Dissolvi
Label Ghostly International 320
Date 2018


元EmeraldsのメンバーSteve Hauschildtの7枚目のソロアルバム。

Emeralds解散以降はKrankyからのリリースが続いていたが、今回はGhostly Internationalからのリリース。

レーベルカラーに内容を合わせたのか、内容にあったレーベルからリリースしたのか、これまでのシンセ主体のコズミック・サウンドから、珍しく全体的にリズムが強調されたアルバムとなっている。

ゲストボーカリストを迎えた曲も2曲ある。SoftwareからリリースのあるGabiが参加した6曲目「Syncope」は、Hauschildtが得意とするシンセアルペジオとGabiのアトモスフェリックなボーカルが絡んだ4/4トラックとなっており、KompaktのThe Fieldあたりを想起させるトラック。

もともとメロディーセンスの感じられる曲を作る人だったが、今作はかなりオールドスクールなTechno/Electronica作品となっているところが意外だった。

Dissolvi

Dissolvi

Lorenzo Senni / XAllegroX / The Shape RemixXxes To Come

Artist Lorenzo Senni
Title XAllegroX / The Shape RemixXxes To Come
Label Warp 425
Date 2018


Lorenzo SenniのWarpからのニューシングルは、DJ StingrayとFlorian HeckerによるRemix盤(Digital盤のみTale Of UsのRemixも収録)。

両名ともLorenzoのレーベルPresto!? からのリリースがあり、その流れでのリミキサー起用かと。

とくに2曲目のHecker Remixが素晴らしく、Lorenzoが得意とする90年代レイヴ/トランスの上モノのみをハードコア化したようなオリジナルトラックを12分超のExperimental Musicに再構築。

1曲目のDJ Stingray Remixは、ノンビートのオリジナルをデトロイト・エレクトロ仕様にリミックス。

3曲目はLorenzoと同じイタリア人の2人組Tale Of Usによる「The Shape Of Trance To Come」のRemix。こちらもノンビートのオリジナルをミニマル・テクノ仕様にリミックス。

個人的に最も次作を楽しみにしているアーティスト。

The Shape Of RemixXxes To Come

The Shape Of RemixXxes To Come

Donato Dozzy / Filo Loves The Acid

Artist Donato Dozzy
Title Filo Loves The Acid
Label Tresor 303
Date 2018


イタリア人プロデューサーDonato Dozzyの新作は、アルバムタイトル通りAcid Track集。しかもTresorからのリリースで、カタログナンバーは303。

Original Acid Houseのスタイルに忠実に、キックとハイハットと303のみで見事なバリエーションを生み出しており、Donato Dozzyのプログラミングスキルが冴え渡っている。

また、Acid Houseへのリスペクトだけでなく、6曲目「Vetta Reprise」のハードミニマル、7曲目「TB Square」のエレクトロなど、TresorからのリリースにふさわしいTechnoな内容となっている。

なお、2017年にリリースされたレーベル25周年記念コンピレーション『Dreamy Harbor』に収録された「The Night Rider」がTresorからの初リリースであり、こちらのトラックもTB303使いのAcid。

ちなみにこのコンピレーションの1曲目は、Vainqueurの素晴らしい「Solanus (Extracted 2)」で、こちらも必聴。

Filo Loves the Acid

Filo Loves the Acid

Dreamy Harbor

Dreamy Harbor

David Sylvian & Holger Czukay / Plight & Premonition / Flux & Mutability

Artist David Sylvian & Holger Czukay
Title Plight & Premonition / Flux & Mutability
Label Grönland Records 193
Date 2018


David SylvianとHolger Czukayが1988年と1989年にリリースしたコラボレーション作『Plight & Premonition』と『Flux + Mutability』が2in1でリイシュー。

David SylvianとHolger Czukay

2人のコラボは、David SylvianがJapan解散後の1984年にリリースしたソロアルバム『Brilliant Trees』にHolgerが参加したことから始まり、1985年のEP『Words With The Shaman』を経て、本作で本格的な共作を果たすことになった。

『Plight & Premonition』

1987年、Holger Czukayが『Rome Remains Rome』作成中に、David Sylvianがケルンにあるカンのスタジオを訪れ、その際にセッションしたもの。

1曲目「Plight (The Spiralling Of Winter Ghosts)」は、David Sylvianが演奏するドローンを基本に、Holger Czukayの短波ラジオサンプリングやテープエディットが飛び交うインプロヴィゼーション。個人的にはベストトラック。

2曲目「Premonition (Giant Empty Iron Vessel)」も基本的には同じスタイルだが、どちらかというとDavid Sylvian寄りの構成。

『Flux + Mutability』

基本的には前作の延長線上の作品。しかし、前作は両者の演奏が渾然一体となった印象であるのに対し、『Flux + Mutability』は曲ごとの主導権が明確になっている。

1曲目「Flux (A Big, Bright, Colourful World)」はHolger主導のサイドであり、CANのメンバーからJaki LiebezeitとMichael Karoliがパーカッションとギターで参加、Karlheinz Stockhausenの息子のMarkus Stockhausenがフリューゲルホルンで参加している。

2曲目「Mutability ("A New Beginning Is In The Offing")」はDavid主導のサイドであり、叙情的なメロディが印象的なアンビエント作品となっている(この曲は短くエディットされたバージョンがあり、様々なコンピレーションに収録されている)。Jaki Liebezeitがフルートで参加しているが、Holgerの存在はあまり感じられず、4曲通して聞くとこの曲だけが浮いている感じがする。

レーベルについて

長らく廃盤状態だった本2作をリイシューしたのはGrönland Records。最近ではDAFのボックスや、Robert Görlのデモトラックなど、ドイツ系アーティストのリイシューで有名なレーベルである。

Holgerの死後、5CDボックス『Cinema』をリリースし、本作でHolger関連は2枚目となる。 今後、更なるHolger関連作品のリイシュー&発掘を期待したいところ。

プライト&プリモニション+フラクス&ミュータビリティ

プライト&プリモニション+フラクス&ミュータビリティ

  • アーティスト: デイヴィッド・シルヴィアン+ホルガー・シューカイ
  • 出版社/メーカー: Pヴァイン・レコード
  • 発売日: 2018/06/27
  • メディア: CD
  • この商品を含むブログを見る

Spacemen 3 / Taking Drugs To Make Music To Take Drugs To

Artist Spacemen 3
Title Taking Drugs To Make Music To Take Drugs To
Label Space Age Recordings 056
Date 2018


1990年にFather Yodからブートレッグでリリースされた初期デモ音源集。

1994年にBomp!から収録曲を追加してCD化されており、それが当時タワレコ等の大手にも出回っていたので、ブートレッグではあるが結構有名なコンピレーション(当時は正直ブートレッグだとは思っていなかった)。

2000年にSpace Age Recordingsから正規版としてリリース。今回はそのリイシュー版であり、収録内容は変わってないが、ジャケットがオリジナルLP時に近いデザインに変更となっている。

1〜7+9曲目は、「ノーサンプトン・デモ」と呼ばれる初期デモ音源。録音は1986年1月。このデモによりGlass Recordsと契約し、1stアルバムがリリースされることとなった。 デモなので録音は粗いが、ガレージバンドとしての魅力は1stよりも高い(ソニックもジェイソンも1stよりこのデモのほうが好きらしい)。

その他の収録曲は、8曲目は1987年のデモ、10曲目は1stアルバムのアウトテイク、11〜12曲目は1987年のリハーサル音源、13曲目は1987年のライブ音源となっている。

Space Age Recordingsは、当時ブートレッグとして出ていたコンピレーション等を積極的に正規版としてリイシューしており、Spacemen3に対する思い入れの強さを感じられる。

特に本作は、象徴的なアルバムタイトルも含め、初期の代表作としてふさわしいコンピレーションアルバムであり、正規にカタログ化されたものが聞けるのはありがたい。

Taking Drugs to Make Music to

Taking Drugs to Make Music to

Daedelus / Taut

Artist Daedelus
Title Taut
Label Magical Properties 024
Date 2018


Daedelusの19枚目のアルバム『Taut』。自身のレーベルであるMagical Propertiesからのリリース。

様々な作風で知られているが、今作はIDM寄りで、めずらしく4/4トラックが多い作品となっている。これまでのDAWを捨て、Ableton Liveを全面的に導入して製作されたらしく、そのことが以前の作品と比べて少し違った感触として聞こえているのかもしれない。

最近ではBrainfeederやAlpha Pupからのリリースが多く、LAビートメーカーの第一人者として認識されているDaedelusだが、1stはPthalo、2ndはPlug Researchからのリリースであり、もともとIDM/Electronicaの系譜から出てきた人という印象だった。

メロディメイカーとしての才能も相変わらずであり、個人的には本作のような路線は好みである。

Taut (タウト)

Taut (タウト)